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 ~クドリャフカについて
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忘れないで...。

あなたは、誰かの宝物。

忘れないで、生きることを――。
忘れないで、大切な命のことを、

忘れないで、
今は亡き小さな命のことを――。


忘れないで...。  

 

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...おまけ
 
 ○人の命も見直そう

 

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子供が生まれたら犬を飼いなさい。
 
子供が赤ん坊の時、子供の良き守り手となるでしょう。
 
子供が幼年期の時、子供の良き遊び相手となるでしょう。
 
子供が少年期の時、子供の良き理解者となるでしょう。

そして子供が大きくなった時、自らの死をもって子供に命の尊さを教えるでしょう。


   …イギリスことわざ…


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彼女の名は、「クドリャフカ」。

ロシア語で「巻き毛」という意味を持つ、
体重5kgほどの小さな雌犬。

地球上、初めて宇宙へと旅立った生命体である。


犬は古くから人間の友で、
人間に対して恐怖や抵抗を示すことが少なく、
実験動物として最適だった。

そのため、当時ソ連では、
『宇宙犬』として20頭以上のエリート犬達が、
ロケットで高度200kmまで打上げられてパラシュートで降下したり、
数週間、小さな気密室にずっと閉じ込められたりなど、
様々な訓練を、何度も何度も繰り返し受けていた。

そして選ばれたのがクドリャフカだった。


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1957年11月3日(日)

クドリャフカは、特別の気密服を着せられ、
スプートニク2号内部の、アルミ合金でできた
小さな気密室に入れられた。

やがて、ロケットのエンジンに点火され、秒速8kmまで加速。
人間さえ経験したことのない激しい衝撃が彼女を襲った。

それでも彼女は今までの訓練と同様に、
きっとまた、必ず地上に戻って来られると信じていたに違いない。

しかし、この人工衛星は違っていた。

パラシュートの代わりに搭載されていたのは、
エックス線計測機器、クドリャフカの脈拍・呼吸数・血圧計測装置、
無線送信機などだけだった。

そして用意された酸素と食糧は数日分。
クドリャフカは、二度と戻ることのない片道切符の旅に出たのだった。


1957年11月4日(月)

タス通信によると、この日のクドリャフカの健康状態は極めて良好。

彼女の生態データは無線機で送信され、
地上の基地ではそのデータが随時分析されていた。

狭い気密室に閉じ込められたまま、
微かに聞こえるのは観測機器の音だけ。

淋しくて、彼女は何度も遠吠えしたかもしれない。
そんな深い孤独の中で、彼女は一体、何を考えていたのだろうか。


1957年11月5日(火)

東京の真ん中でさえ
スプートニク2号の姿は肉眼ではっきり捉えられた。


1957年11月7日(木)

宇宙に打ち出されて5日目。
スプートニク2号は、地球を60周以上も回っていた。

食糧も少なく、身動きも取れず、何よりも孤独だった。

たった一つ取り付けられた窓らしきものから、
彼女は暗い宇宙や青い地球を、そっと眺めることができたのだろうか。


1957年11月8日(金)

クドリャフカにとって最後の食事は、
これまでの5日間と同じように細いチューブで喉の奥に流し込まれた。

その直後、彼女が苦しんだのか、
眠るように意識を失ったのかは誰にもわからない。

酸素が無くなり苦しむ前に
睡眠薬入りの毒物で安楽死させたらしいが、真相は不明のまま…。

世界初の宇宙飛行士は、同時に、
世界初の宇宙での犠牲者にもなってしまった。


1958年11月10日(月)

スプートニク2号からの通信が途絶える。


1958年4月14日(月)

打ち上げから165日が経過。

この日午前、スプートニク2号は濃密なる大気中に突入。
破壊、消滅した。

クドリャフカの長い旅は、終わった。


人類最初の宇宙飛行士は、
人間よりも小さな命の犠牲によって成り立っていたのだ。



――彼女の名は、
「クドリャフカ」。

裏切りを知らない、小さな1匹の雌犬。

この栄光無き英雄を、世界初の宇宙飛行士を、
どうか、忘れないで欲しい。

 

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