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この世の中は、
親友でさえ、あなたを裏切り、敵となる事がある。
愛情をかけて育てた我が子も、
深い親の愛をすっかり忘れてしまうかもしれない。
あなたが心から信頼している、最も身近な愛する人も、
その忠節を翻すかもしれない。
富はいつしか失われるかもしれない。
最も必要とする時に、あなたの手にあるとは限らない。
名声は、たった一つ思慮の欠けた行為によって、
瞬時に地へと堕ちてしまう事もあるだろう。
成功に輝いてる時はひざまずいて敬ってくれた者が、
失敗の暗雲があなたの頭上をくもらせた途端に豹変し、
悪意の石つぶてを投げつけるかもしれない。
こんな利己的な世の中で、
決して裏切らず、恩知らずでも不誠実でもない、
絶対不変の唯一の友はあなたの犬なのです。
あなたの犬は、
富める時も貧しき時も健やかなる時も病める時も、
常にあなたを助ける。
冷たい風が吹きつけ、雪が激しく降る時も、
主人の傍ならば冷たい土の上で眠るだろう。
与えるべき食物が何一つなくても、
手を差し伸べればキスをしてくれ、
世間の荒波にもまれた傷や痛手を優しく舐めてくれるだろう。
犬は貧しい民の眠りを、
まるで王子の眠りのごとく守ってくれる。
友が一人残らずあなたを見捨てて立ち去っても、
犬はあなたを見捨てはしない。
富を失い名誉が地に堕ちても、
犬はあたかも日々天空を旅する太陽のごとく、
変わることなくあなたを愛する。
たとえ運命の力で、友も住む家もない地の果てへ追いやられても、
忠実な犬はあなたと共にある事以外何も望まず、
あなたを危険から守り、敵と戦う。
すべての終わりがきて、
死があなたを抱き取り、骸が冷たい土の下に葬られる時、
人々が立ち去った墓の傍らには、前脚の間に頭を垂れた気高い犬がいる。
その目は悲しみにくもりながらも、油断なく辺りを見まわし、
死者に対してさえも、忠実さと真実に満ちているのです。
これは、19世紀、
アメリカ合衆国ミズーリ州で起きた犬の射殺事件裁判にて
上院議員ジョージ・ベストが行った弁論の一部です。